シトルリンタイトル

スイカの代表的な栄養素:シトルリンとその健康効果とは

スイカに含まれるシトルリンとは?

シトルリン(Citrulline)は、スイカをはじめとするウリ科の植物に多く含まれる非必須アミノ酸の一種で、さまざまな健康効果があるとされ注目されています。スポーツをしている方には、パフォーマンス向上に効果的なサプリメントとして目にしたことがあるかもしれません。

シトルリンに期待される健康効果として、以下のものが挙げられます。

  • 筋力や持久力などの運動パフォーマンス向上
  • 筋肉痛や筋疲労の改善
  • 血中コレステロール値の改善
  • 血管の健康維持
  • 老化による筋肉減少(サルコペニア)の予防
  • 抗酸化作用

[1,2,3]より引用

さらに、シトルリンは腸の健康を評価する指標として使われたり、非アルコール性脂肪肝疾患の改善にも効果が期待されています。シトルリンはその多様な健康効果から、スポーツの現場や医療分野での活用も期待されています。

近年は、シトルリンが持つ「血管の柔軟性を向上させる作用」に関する研究が進んでいます。特に動脈が硬くなってしまうこと(動脈硬化)は、生活習慣病の原因の一つとしてよく知られています。

シトルリンの摂取により血管の柔軟性が向上し、血流がスムーズになることで、脳卒中や心筋梗塞などさまざまな病気を予防できる可能性が期待されています。

シトルリンが血管に与える効果のメカニズム

シトルリンが体内で作用するメカニズムには「アルギニン」と「一酸化窒素(NO」が密接に関わっています。

アルギニンはエナジードリンクなどに含まれるアミノ酸で、耳にしたことがある方も多いかもしれませんが、一酸化窒素(NO)は日常的にはあまり馴染みがないかもしれません。

しかし、NOは血管の健康や機能に重要な役割を果たすため、非常に注目されています。

シトルリンは摂取されると小腸で吸収され、腎臓でアルギニンに変換されます。このアルギニンが血管に運ばれると、血管の内壁(血管内皮)にある内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)によって一酸化窒素(NO)に変換されます。

シトルリンとアルギニンの体内における循環
シトルリンとアルギニンの体内における循環

NOは血管の壁を柔らかくし、血管を拡張させることで血流を促進し、血圧を適正に保つ働きを担います。

このメカニズムにより、NOは血管の柔軟性を向上させ、動脈硬化を予防する効果があるとされています。

またNOがアルギニンから生成されると同時に、シトルリンも再生成されます。この循環によってNOの生成が効率よく持続し、血管の健康が保たれます。

つまり、シトルリンはアルギニンを介して間接的にNOの生成をサポートし、結果的に血管拡張や血流の改善といった効果をもたらすことがわかります。シトルリンは血管機能の向上に貢献し、生活習慣病を予防する役割を果たしています。

アルギニンだけを摂取すればいいのでは?

「シトルリンではなく、アルギニンを直接摂取すれば十分では?」と感じる方もいるかもしれません。

確かに、アルギニンの摂取は健康において重要な役割を果たします。

しかし、アルギニンは摂取後、その多くが肝臓で代謝されるため、全身に行きわたる量が限られてしまいます[4]。さらに、一部の方には消化不良胃腸の不快感を引き起こす可能性も報告されています[5, 6]9gを超える程度の量を一度に摂取することは控えた方が良いでしょう。

一方、シトルリンはほとんど肝臓で代謝されることなく体内に吸収され、腎臓でアルギニンに変換されるため、血中アルギニン濃度をより安定的に高めることができます。シトルリンを摂取することで効率的にアルギニンが供給され、NOを介した血管拡張効果が期待できます。

また、シトルリンは乳幼児や妊婦にも副作用がほとんどないとされ[1]、消化不良や胃腸への負担が少ないため、安心して摂取できます。

さらに、シトルリン摂取で血中アルギニン濃度が上昇するとの報告もあり[7]安全に血管の柔軟性を向上させるためにはシトルリンの方が適しているといえます。

シトルリンが含まれる食品ランキング[8,9より作成]

シトルリンはウリ科の野菜に多く含まれる栄養素ですが、特にスイカには豊富に含まれます。

以下は野菜に含まれるアルギニンとシトルリンについてまとめたものです。

食品別アルギニン含有量

食品別シトルリン含有量

このグラフからわかるように、スイカには他の野菜と比較して圧倒的に多くのシトルリンが含まれています。また、アルギニンも豊富に含まれているため、体内でNOを生成する効率を高め、血管拡張や血流改善を助ける作用が期待できます。

最新研究で確認されたシトルリンの効果

血圧の改善効果

私たちの健康の指標としてよく知られている「血圧」。一度は病院や健康診断で測ったことがあるかと思います。血圧は、私たちの血管の状態を反映する重要な数値で、心血管の健康状態を知る上でも役立つ指標です。

血圧に影響するのは、血管の柔軟性や血液の流れやすさです。例えば、運動不足や高脂肪の食事などが続くと、血管が硬くなったり、血液が「ドロドロ」の状態になりやすくなります。

この状態では血液がスムーズに流れず、心臓が必要以上に強く血液を押し出さなければならず、結果的に血圧が高くなります。

特に「動脈硬化」と呼ばれる血管の病変は、血圧の上昇に深く関わります。動脈硬化は、血管の内側にプラーク(コレステロールなどの蓄積物)が溜まってしまい、血液の通り道が狭くなる状態です。この狭まりが心臓に負担をかけ、血圧を押し上げる要因となります。さらにこの高血圧が続くと動脈硬化が進み、悪循環に陥るリスクが高まります。

そんな中、シトルリンは体内で間接的にNO(一酸化窒素)の生成をサポートし、血管の柔軟性の改善に役立つとされています。血管が柔軟になることで血液の流れがスムーズになり、結果的に血圧が下がる効果が期待されています。

いくつかの研究では、スイカに含まれるシトルリンの摂取が血圧を下げる効果を持つことが報告されています[10]。特に高血圧の人に対して効果が見られ、血圧を適切な数値に保つ効果が期待されています。

脂質異常症の改善効果

脂質異常症とは、血液中の悪玉コレステロール(LDL)や中性脂肪が増えたり、善玉コレステロール(HDL)が不足する状態を指します。こうした状態が続くと、血管に負担がかかり、動脈硬化が進行して心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高まります。

最近の研究では、シトルリンがこの脂質異常症の改善に役立つことが示されています。特に、シトルリンを含むスイカ抽出物の摂取が、LDLコレステロールや中性脂肪を減少させる効果があることがメタ分析(複数の研究データをまとめて分析したもの)によって確認されています[2]

脂質代謝を改善させるシトルリンの効果のメカニズムは、体内でアルギニンに変換されることにあります。アルギニンは肝臓で脂質代謝をサポートし、余分なLDLコレステロールや中性脂肪が血中に滞るのを抑えます[10]

シトルリンを日常的に取り入れることで、脂質異常症改善や血管の健康維持に貢献できる可能性があるため、健康管理において注目されています。

疲労回復効果

シトルリンは、疲労回復に役立つ成分として注目されています。特に運動後の疲労感や筋肉痛を軽減する効果が研究で示されており、運動をしている人やトレイニーにとって頼りになる成分です。

2020年にJournal of Sport and Health Scienceに掲載された研究によると、

シトルリンを摂取すると運動後の疲労感(RPE:自覚的運動強度)が軽減され、運動から24時間後と48時間後の筋肉痛も軽くなったと報告されています

[11]より引用

この効果の背景には、シトルリンが体内でNOの生成を促進し、血管を拡張して血流をスムーズにすることで、疲労物質の蓄積を抑える働きがあると考えられています。また、シトルリンはアンモニアの排出も助け、運動中に蓄積される疲労物質を速やかに除去することで、回復を早める効果があると考えられています。

シトルリンの効果を最大限に引き出すためには、運動の12時間前に摂取するのが推奨されています。このタイミングで摂取すると運動をしている最中にはシトルリンがしっかり吸収され、疲労軽減の効果が発揮されやすくなります[11]

高強度運動に対するシトルリンの効果

シトルリンは、血中のL-アルギニン濃度とNOの生成を増加させることで、運動パフォーマンスの向上に役立つとされています。

特に、サイクリングスプリントやジャンプといった短時間で高強度の運動には、シトルリンの即効的な効果が確認されています[12]。。

しかし、一方では運動パフォーマンスへの効果が見られなかったとする研究も存在するため、シトルリンをどのくらいの量をどのタイミングで摂取すべきかについては、今後さらに詳しい研究が求められます[3]

シトルリンが及ぼす健康効果

シトルリンの摂取について

ここまでシトルリンの概要を解説してきましたが、ここでは1日の適切な摂取量の目安や、食品からの効果的な摂取方法についてご紹介します。

シトルリンの1日あたりの摂取量

シトルリンの有効性を検証した研究では、一般的に136gの摂取が用いられています。この範囲が、シトルリンが体に多様な健康効果をもたらす量と考えられています。

スイカからのシトルリン摂取

スイカには天然のシトルリンが豊富に含まれていますが、1日に36gのシトルリンを摂取するには、1kg以上のスイカを食べる必要があります。この量を毎日摂るのは現実的ではないため、スイカだけで十分なシトルリンを得るのは難しいのが現実です。

ちなみに、シトルリンはスイカの果肉や皮に多く含まれています[13, 14]

シトルリンのサプリメント利用の利便性

十分な量のシトルリンを手軽に摂取するためには、サプリメントの活用も効果的です。効率よく摂取することができるため、136gを簡単に摂取することが可能です。サプリメントの形であれば、食事に取り入れやすく、適切な用量を管理しやすい利点もあります。

シトルリンだけに頼らず、食生活全体を大切に

シトルリンには多くの健康効果が期待されますが、サプリメントだけに頼らず、日頃の食生活の質を高めることが最も重要です。バランスのとれた食事こそが健康の基盤であり、シトルリンのような成分がそのサポート役として機能することが理想的です。

実際にスイカにはシトルリン以外にも、食物繊維やビタミンといった体に必要な栄養素が豊富に含まれています。野菜や果物、良質なタンパク質を意識して摂取することで、体全体の健康を保ちながら、シトルリンの効果を十分に引き出せるでしょう。

また、肥満の被験者を対象とした研究では、1日あたり2カップ(約300g)のスイカを4週間にわたって毎日摂取した群では体重や拡張期血圧の減少が報告されています[15]このような研究結果からも質の良い食事が、生活習慣病の予防につながることがわかります

まとめ

シトルリンは、スイカに豊富に含まれる非必須アミノ酸であり、血圧の改善、運動パフォーマンスの向上、脂質代謝のサポート、抗酸化作用など、さまざまな健康効果が期待されています。体内で一酸化窒素(NO)の生成を促進するメカニズムにより、動脈硬化や生活習慣病の予防にも寄与するとされています。

特にシトルリンは、アルギニンよりも安定して血中濃度を高めることができ、副作用が少ないため、日常的な摂取に適しています。

スイカにはシトルリンが豊富に含まれており、食生活に取り入れることが健康維持に有効といえます。研究で効果が確認されているシトルリン量を生のスイカで摂り続けることは難しいですが、スイカは全体的な食事の質を向上させてくれます。

参考文献

1. Maric, S., Restin, T., Muff, J. L., Camargo, S. M., Guglielmetti, L. C., Holland-Cunz, S. G., Crenn, P., & Vuille-dit-Bille, R. N. (2021). Citrulline, biomarker of enterocyte functional mass and dietary supplement: Metabolism, transport, and current evidence for clinical use. *Nutrients, 13*(8), 2794. 

2. Karimi, E., Abaj, F., Gholizadeh, M., Asbaghi, O., Amini, M. R., Ghaedi, E., & Hadi, A. (2023). Watermelon consumption decreases risk factors of cardiovascular diseases: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. *Diabetes Research and Clinical Practice, 202*, 110801. 

3. Gonzalez, A. M., & Trexler, E. T. (2020). Effects of citrulline supplementation on exercise performance in humans: A review of the current literature. *Journal of Strength and Conditioning Research, 34*(5), 1480–1495. 

4. Allerton, T. D., Proctor, D. N., Stephens, J. M., Dugas, T. R., Spielmann, G., & Irving, B. A. (2018). L-Citrulline Supplementation: Impact on Cardiometabolic Health. *Nutrients, 10*(7), 921.

5. Bahadoran, Z., Mirmiran, P., Kashfi, K., & Ghasemi, A. (2020). Endogenous flux of nitric oxide: Citrulline is preferred to Arginine. *Acta Physiologica, 231*(3), e13572. 

6. Grimble, G. K. (2007). Adverse gastrointestinal effects of arginine and related amino acids. *The Journal of Nutrition, 137*(6), 1693S–1701S.

7. Schwedhelm, E., Maas, R., Freese, R., Jung, D., Lukacs, Z., Jambrecina, A., Spickler, W., Schulze, F., & Böger, R. H. (2007). Pharmacokinetic and pharmacodynamic properties of oral L-citrulline and L-arginine: Impact on nitric oxide metabolism. *British Journal of Clinical Pharmacology, 65*(1), 51–59.

8. Fish, W.W. (2012). A reliable methodology for quantitative extraction of fruit and vegetable physiological amino acids and their subsequent analysis with commonly available HPLC systems. *Food and Nutrition Sciences, 3*, 863–871.

9. Hartman, J. L., Wehner, T. C., Ma, G., & Perkins-Veazie, P. (2019). Citrulline and Arginine Content of Taxa of Cucurbitaceae. *Horticulturae, 5*(1), 22. 

10. Burton-Freeman, B., Freeman, M., Zhang, X., Sandhu, A., & Edirisinghe, I. (2021). Watermelon and l-Citrulline in Cardio-Metabolic Health: Review of the Evidence 2000–2020. *Current Atherosclerosis Reports, 23*, 81. 

11. Rhim, H. C., Kim, S. J., Park, J., & Jang, K.-M. (2020). Effect of citrulline on post-exercise rating of perceived exertion, muscle soreness, and blood lactate levels: A systematic review and meta-analysis. Journal of Sport and Health Science, 9(6), 553–561. 

12. Trexler, E. T., Smith-Ryan, A. E., Stout, J. R., Hoffman, J. R., Wilborn, C. D., Sale, C., … & Antonio, J. (2019). Acute effects of citrulline supplementation on high-intensity strength and power performance: A systematic review and meta-analysis. *Sports Medicine, 49*(5), 707-718. 

13. Gu, I., Balogun, O., Brownmiller, C., Kang, H.W., & Lee, S.-O. (2023). Bioavailability of Citrulline in Watermelon Flesh, Rind, and Skin Using a Human Intestinal Epithelial Caco-2 Cell Model. *Applied Sciences, 13*(8), 4882. 

14. Ridwan, R., Abdul Razak, H. R., Adenan, M. I., & Md Saad, W. M. (2018). Development of isocratic RP-HPLC method for separation and quantification of L-citrulline and L-arginine in watermelons. *International Journal of Analytical Chemistry, 2018*, Article ID 4798530. 

15. Lum, T., Connolly, M., Marx, A., Beidler, J., Hooshmand, S., Kern, M., Liu, C., & Hong, M. Y. (2019). Effects of Fresh Watermelon Consumption on the Acute Satiety Response and Cardiometabolic Risk Factors in Overweight and Obese Adults. *Nutrients, 11*(3), 595. 

16. Azizi, S., Mahdavi, R., Vaghef-Mehrabany, E., Maleki, V., Karamzad, N., & Ebrahimi-Mameghani, M. (2020). Potential roles of Citrulline and watermelon extract on metabolic and inflammatory variables in diabetes mellitus, current evidence and future directions: A systematic review. *Clinical and Experimental Pharmacology and Physiology, 47*(2), 187–198. 

17. Jegatheesan, P., Beutheu, S., Freese, K., Waligora-Dupriet, A.-J., Nubret, E., Butel, M.-J., Bergheim, I., & De Bandt, J.-P. (2016). Preventive effects of citrulline on Western diet-induced non-alcoholic fatty liver disease in rats. *British Journal of Nutrition, 116*(2), 191–203. 

18. Tovar-Villegas, V. I., Kang, Y., Ibarra-Reynoso, L. R., Olvera-Juárez, M., Gomez-Ojeda, A., Bosquez-Mendoza, V. M., Maldonado-Ríos, M. L., Garay-Sevilla, M. E., & Figueroa, A. (2024). Oral L-Citrulline Supplementation Improves Fatty Liver and Dyslipidemia in Adolescents with Abdominal Obesity: A Parallel, Double-Blind, Randomized Clinical Trial. *Gastroenterology Insights, 15*(2), 354-365.