スイカに含まれるリコピンの健康効果

トマトだけじゃない!! スイカに含まれるリコピンの驚くべき健康効果

リコピンとは?

リコピンは、「カロテノイドの一種で、赤やピンク色の果物や野菜に含まれる天然色素です。

これだけ聞くとあまりピンとこないですよね

もう少し噛み砕いて説明します。

今話に出てきたカロテノイドとは「フィトケミカル」という大きなカテゴリーに含まれています。

フィトケミカル」とは、植物が昆虫や動物に食べられたり、紫外線や病原体からダメージを受けたりしないように、自己防衛のために作り出す物質のことです。

外敵から身を守るためにフィトケミカルは様々な色や味(辛味や苦味など)を持っており、これは昆虫からの被害や紫外線から身を守るために生成されていると考えられています。

近年では、このフィトケミカルは人間の健康に非常に有益であることがわかってきており、積極的な接種が推奨されます。

野菜や果物を食べると免疫機能が向上して風邪をひきにくくなったり、様々な生活習慣病予防に役立ったりしますが、その理由の一つにこのフィトケミカルの働きがあるわけです。

ちなみにリコピンが属するカロテノイドは自然界にたくさんの種類が存在し、他にはβカロテンやルテインなどが挙げられます。

カロテノイドはいくつかの研究で抗酸化作用や目の健康を改善する効果があるとわかっています。

中でもリコピンは強力な抗酸化作用を持っており、様々な病気の予防や治療に役立つとされ期待されています。

フィトケミカルの分類

スイカにリコピンはどのくらい含まれるの?

リコピンといえばスイカ」と答える人は少ないかもしれませんが、実はスイカのリコピン含有量は生の可食部において、トマトを超えているんです!

アメリカ合衆国農務省(USDA)によると

生の食品100gあたりに含まれるリコピンの量はスイカで4532μg、完熟トマトで2573μgであったと報告されました。

[1]より引用

このデータを見ると、スイカがリコピンの供給源として非常に優秀であることがわかりますね。

ちなみに生の状態で最もリコピン含有量が多いと報告されたのは「グアバ」で、100gあたり5204μgでした。

グアバは日本ではあまり馴染みのない果物ですが、スイカは毎年日本の多くの人に食べられており、手軽にリコピンを補給することができます。

したがって、我々日本人にとっては「リコピンといったらスイカ」といった方が正しいのかもしれませんね。

「リコピンといえばトマト」というイメージが広まった背景には、トマトの加工品においてリコピンの含有量が非常に高くなるためだと考えられます。野菜や果物は水分を多く含んでいるため、100gあたりの栄養素の量が比較的少なくなりますが、加工して水分を飛ばすと、100gあたりの栄養素の量が大幅に増加します。

例えば、乾燥トマトのリコピン含有量は100gあたり45902μgとなっており、他の食品と比較して圧倒的に高い数値を記録しています。

食品100gあたりに含まれるリコピンの量

リコピンの健康効果

リコピンは健康にいいということはよく耳にされる方も多いと思います。でも具体的には何に対して効果的なのか分からない人も多いのではないでしょうか。

ここではリコピンの持つ健康効果について最新研究を踏まえて説明していきます。

抗酸化作用

ここまでの話にもあるように、リコピンは強力な「抗酸化作用」を持っているとして知られていますが、具体的には何をしてくれるのかご存知でしょうか。

抗酸化作用」について理解するために、まずは「酸化ストレス」についてご説明いたします。

私たちの体内では呼吸をした際に一部の酸素から「活性酸素」と呼ばれる物質が生じます。

活性酸素」は体内で免疫の働きを担う重要な役割がありますが、この「活性酸素」が体内で過剰となっている状態は体にとって有害であることが知られています。

対して、この「活性酸素」の働きにブレーキをかけてくれるのが「抗酸化作用」を持つ食品です。

「抗酸化作用」が不十分で、「活性酸素」が体内で過剰となってしまっている状態のことを「酸化ストレス」と言います。

この「酸化ストレス」は人間の老化を促進し、生活習慣病にかかりやすくしてしまいます「体が錆びている」とも表現されますね。

リコピンのような「抗酸化作用」を持つ物質は「活性酸素」を中和し、「酸化ストレス」を調整する働きがあります。

健康的でいつまでも若々しくいたいというのは多くの人の憧れですが、現代人はこの酸化ストレスが過剰となってしまっていることが非常に多いのが現状です。

この酸化ストレスを引き起こしてしまう原因として、偏った食生活、運動不足、紫外線、喫煙、睡眠不足などが挙げられます。

健康な人の体内では活性酸素と抗酸化物質のバランスが保たれているのですが、上述したような不摂生が続くと「活性酸素」が過剰な状態を作り出してしまい、「酸化ストレス」が体に悪影響を及ぼすと言うわけです。

リコピンはカロテノイドの中でも特に強力な抗酸化作用を持っているとされます。

リコピンは野菜や果物に豊富に含まれるため、日々の健康を保つためにも積極的に摂取することが推奨されます。

近年では、「酸化ストレス」が様々な疾患に関連していることがわかってきており、リコピンはその強力な抗酸化作用から病気の予防や治療への利用を期待されています。

現代人の受ける酸化ストレスの説明
現代人の受ける酸化ストレスとは

抗炎症作用

リコピンには、強力な抗酸化作用に加え、抗炎症作用があることも報告されています。

炎症って、怪我や病気のときに起こるものじゃないの?」と感じる方もいるかもしれません。確かに、炎症という言葉からは、目に見える症状を連想しがちですが、実際にはもっと広範な現象を指しています。

炎症とは、体が受けたダメージに対する防御反応です。たとえば、傷や感染による局所的な炎症では、「疼痛(痛み)」「発熱」「発赤(赤み)」「腫脹(腫れ)」といった四つの特徴的な兆候が現れます。これらは、体がダメージを修復しようとする自然なプロセスの一部です。

しかし、炎症は必ずしも目に見える形で現れるとは限りません。体の内部でも、慢性的な炎症が頻繁に起こっており、これが健康に大きな影響を及ぼすことが知られています。

前述の「酸化ストレス」は体内で炎症を引き起こすとされており、リコピンは抗酸化作用や抗炎症作用などの多数方面から総合的に体内の健康維持に役立つことがわかります。

では、体内で炎症が起こっているとどうなるのでしょうか?

体内での慢性的な炎症はメタボリックシンドローム、2型糖尿病、非アルコール性脂肪性肝疾患、高血圧、心血管疾患、慢性腎臓病、様々な癌、うつ病、神経変性疾患、自己免疫疾患、骨粗しょう症、サルコペニアのリスクが増加すると言われています[3]

したがって過度の炎症を抑えることが長生きにはとても大事なことがわかりますね。

事実、85歳以上の高齢者において血液中の炎症数値は余命と関連しており[2]、体内の炎症数値が低いことは長寿をもたらすことが示唆されています。

体内の炎症を改善させる方法は難しくありません。不摂生な生活をさけ、運動や睡眠、バランスの取れた食事を摂ることが大事とされます。

リコピンは抗炎症作用を持っているため、体内の炎症を改善するサポートをしてくれるというわけです。

炎症が影響する疾患

抗がん作用

リコピンには抗がん作用(がんを予防しがん細胞を死滅させる作用)があることが知られています。

この効果は、動物実験や人を対象とした研究において報告されています。

がんは体内の炎症と密接な関係があるとされており、体に酸化ストレスがかかるとDNA損傷を引き起こし、がん細胞が発生しやすい環境が体内で作られてしまします。

がん細胞は、正常な細胞が制御メカニズムを失い、無秩序に増殖し、他の組織に侵入する性質を持つ異常な細胞です。実は、健康な人の体内でも毎日5000のがん細胞が発生しているとされています。しかし、通常は免疫システムがこれらの異常細胞を認識し、排除することで健康を保っています。

ところが免疫機能が低下した状態では、がん細胞が除去されずに増殖を続け、やがて「腫瘍」として成長します。

リコピンは「腫瘍」の発生を予防してくれます。

上述のようにリコピンはこの酸化ストレスを抑える働きを持ち、炎症の発生を抑えることで細胞を守り、がん発生リスクを軽減します。

また、リコピンはがん細胞の成長を抑制し、細胞死(アポトーシス)を誘導する作用も確認されています。この働きにより、がん細胞の増殖や拡散を防ぐ可能性があります。

年齢を重ねると、がんの罹患率が上昇することが統計データから明らかになっています[4]特に50歳以降、がん罹患率は急激に増加し、これは老化とがんの密接な関連を示しています。

加齢に伴い、免疫力が低下するとともに、細胞の修復能力も衰えるため、体内で発生するがん細胞を効率よく排除できなくなると考えられています。

リコピンの抗がん作用に関する研究は、さまざまながんの種類を対象に進められています。特に、前立腺がんに対する有効性については多くの研究結果が報告されており、その効果が注目されています。また、胃がん、大腸がん、肺がんなどにおいても、予防効果があることを示唆する研究が徐々に増えています。

がんのメカニズムについてはまだ解明されていない部分が多いものの、野菜や果物に含まれる成分ががんをはじめとする生活習慣病を予防することは、疫学調査から明らかになっています。リコピンは抗がん作用を持つ物質の一つであり、そのリコピン多く含むトマトやスイカなどの食品は、手軽に取り入れられるうえ、その健康効果は非常に高いと言えます。

アルツハイマー型認知症の予防効果

リコピンには、アルツハイマー型認知症を予防する効果があると考えられています。アルツハイマー型認知症は、発見から100年以上が経過した現在でも、多くの謎が残されていますが、近年の研究により病態の一部が解明されつつあります。

この病気では、脳内に異常なタンパク質であるアミロイドβタウタンパク質が蓄積することが確認されています。これらのタンパク質の蓄積は、脳に慢性的な炎症を引き起こします。この炎症が長期化すると、神経細胞が次々にダメージを受けて壊れ、記憶力や認知機能が徐々に低下していくのです。また、進行するにつれて、脳全体の萎縮が顕著に見られるようになります。こうした病態には、炎症が深く関与している可能性が指摘されています[5]

リコピンの有益性は、主にその強力な抗酸化作用に起因します。リコピンは、体内で発生する活性酸素を効果的に除去する能力があり、この特性が炎症を抑制し、神経細胞を保護する役割を果たすと考えられています。

実際に行われた研究では、リコピンを長期間摂取したラットを用いた実験で、アミロイドβによる脳の炎症や認知機能の低下が抑制されることが確認されました[6]

この研究では、リコピンを摂取したラットにおいて、記憶力や学習能力が改善されるといったポジティブな効果が認められています。このような結果は、リコピンが脳の健康を維持するうえで重要な役割を果たす可能性を示唆しています

リコピンの一日の摂取量

素晴らしい健康効果を持つリコピンですが、どれくらい摂取すればいいのでしょうか?

実はリコピンの1日の摂取量について明確な基準は設けられていません。厚生労働省でもリコピンの具体的な推奨摂取量や制限を提示していませんが、サプリメントなどで大量に摂取すると、副作用が報告されることがあります。

例えば、過剰摂取によって「リコピン血症」という症状が現れる可能性が指摘されています。この症状は、皮膚がオレンジ色になるような一時的な変化を引き起こしますが、健康への重大な影響は少ないとされています。

それでも、通常の食品からリコピンを摂取するだけであれば、このようなリスクを心配する必要はほとんどありません。

一般的には健康な成人で1日あたり1020mg程度を目安に摂取することが推奨されています。

たとえば、スイカなら約250500g24カップ程度)、トマトなら中サイズで2~4個程度で必要な量を摂取できます。またトマトは完熟している方がリコピン含有量が多いとされます。

一つの品目で補うのは少し大変かもしれませんが、さまざまな食品を摂取することで十分に賄うことが可能です。

日々の食生活にリコピンを積極的に取り入れることで、健康促進だけでなく、美肌や抗酸化作用といった恩恵を得ることができます。ぜひ、野菜や果物を中心としたバランスの良い食事の中で、リコピンを楽しみながら取り入れてみてください。

スイカとトマトでみる1日のリコピン摂取量

まとめ

トマト、スイカの写真

いかがでしたでしょうか?

リコピンは抗酸化作用に優れ、身体を健康で若々しく保つサポートをしてくれる重要な成分です。実はスイカにはトマト以上にリコピンを多く含んでおり、日常の食事に取り入れる価値があります。

ぜひ、リコピンを積極的に摂取してみてください。

参考文献

[1] アメリカ合衆国農務省 (USDA). (2015). USDA National Nutrient Database for Standard Reference. アメリカ合衆国農務省.閲覧日:2024/11/25

[2]新井康通. (2016). 百寿者から探る健康長寿の秘訣. KOMPAS 慶應義塾大学病院.閲覧日:2024/11/25

[3]Furman, D., Campisi, J., Verdin, E., Carrera-Bastos, P., Targ, S., Franceschi, C., … & Slavich, G. M. (2019). Chronic inflammation in the etiology of disease across the life span. Nature Medicine, 25(12), 1822–1832. 

[4]公益財団法人がん研究振興財団. (2022). がんの統計 2022

[5]Twarowski, B., & Herbet, M. (2023). Inflammatory processes in Alzheimer’s disease—Pathomechanism, diagnosis and treatment: A review. International Journal of Molecular Sciences, 24(6518).

[6]Chen, D., Huang, C., & Chen, Z. (2019). A review for the pharmacological effect of lycopene in central nervous system disorders. Biomedicine & Pharmacotherapy, 111, 791–801. 

[7]厚生労働省. (2021). 運動と栄養. e-ヘルスネット.閲覧日:2024/11/22

[8]Grandner, M. A., Jackson, N., Gerstner, J. R., & Knutson, K. L. (2014). Sleep symptoms associated with intake of specific dietary nutrients. Journal of Sleep Research, 23(1), 22–34. 

[9]加藤秀人. (2020). 炎症とは. 東京女子医科大学雑誌, 90(1), 1-13. 

[10]Kapala, A., Szlendak, M., & Motacka, E. (2022). The anti-cancer activity of lycopene: A systematic review of human and animal studies. Nutrients, 14(23), 5152.